【最初に結論を】
1.気温が高くなくても、湿度の高い状況では熱中症のリスクが高いです。油断禁物。
2.直接浴びないでもいいので、扇風機などで風の流れを作りましょう。
3.タオルを使って汗を拭ったり、こまめに肌着を着替えるのも効果的です。

 

お盆も終わり、世間もいつも通りに動き始めた感じです。当院も朝から営業しております。涼しいながらもかなりの湿気を感じましたので、朝方気温湿度を測りました。乾球温度25.5度、湿球温度23.5度。計算したら湿度が85%。そりゃ蒸す訳です……。

ご注意下さい。気温が余り上がらない、しかも涼しい訳でもない今日の様な日は、思った以上に熱中症になりやすいです。熱中症のリスクは高いのに、一見暑くないから油断が生じ、対策を怠りがちになるからです。

 

人間は、熱がなければ生命を維持できなくなって死んでしまいます。なので、絶えず体内で熱を作り続けていますが、その熱を体内に溜め込んでしまうと、今度は臓器や組織を形成する蛋白質が熱で焼けて壊れてしまうので、生命を維持する為の働きが出来なくなって、やはり死んでしまいます。そのため、体温を適度に放出しながら活動していく必要があるのですね。

体温を放出する役割を担うのは汗です。汗は、それ自体が体内から熱を外に運び出す役割をしています。冬にトイレで小用を足すと、尿と一緒に熱が失われるので、にわかに寒気を覚えて身体がブルッと震えるのと同じ原理です。
「そんなに汗なんかかいてないよ」と思われるかも知れませんが、ダラダラと流れる物だけが汗でなく、人間の体表面には絶えずうっすらと汗が滲み出てきています。それを汗として認識しないのは、水滴となって垂れる前に蒸発してしまうからです。この蒸発の際、大量の熱が空気中に逃げていくため、体内の熱を更に効率的に発散することが出来るのです。

逆に言うと、汗をどれだけかいたとしても、汗の蒸発が起こらなければ、熱が効率的に発散されず、体内に残りやすくなります。空気中の湿度が高いと、身体を取り巻く様に、非常に湿度の高い空気のヴェールがまとわりつき、汗が蒸発しづらくなるので、熱中症のリスクが高まってしまうのです。

空気のヴェールがまとわりついているのが蒸発を妨げるのであれば、そのヴェールを剥いでやるのが対抗策です。風の流れがあれば、ヴェールは剥がされ、いくらか湿度が低い空気が流れ込んでくるので、その空気に向かって肌表面の汗が蒸発し、熱が逃げていきます。濡れたところに風を浴びると冷たく感じるのはこのためです。

室内に風の流れを作りましょう。温度が高くなければ窓を開けて頂くのが良いでしょう。扇風機やサーキュレーターを使って、人工的に風を起こすのも効果的です。「風を浴びると寒くなる、風邪を引くから……」とおっしゃる方も多いのですが、身体に直接浴びなければ、体はそんなには冷えません。直接自分には向けず、室内にゆるやかな空気の流れを作れる様に扇風機を回して頂くと良いですね。

また、蒸発が妨げられていたとしても、汗自体が熱を体内から運び出してくれる訳ですから、その汗を体表面から取り除ければ、熱もいくらか逃げてくれますし、何より肌がべとつかず、爽やかになります。綿のタオルをこまめに替えて、肌を優しく拭って噴き出た汗を吸い取りましょう。肌着をこまめに着替えて頂くのも良いですし、速乾性の機能性衣料を着用して、肌表面の汗を蒸発させるのも効果があります。

細かいことが難しければ、取り敢えずエアコンを点けて、体を冷やしすぎない温度に調整しましょう。エアコンの使いすぎはよくないですけれども、熱中症になることを考えたらずっとマシです。冷えた分は後で飲食や衣服で暖めて、バランスを取れば良いと思っています。それについてはまた稿を改めて。